第一章 総則(1-4条) | 動物愛護法を読んでみよう

第一章 総則(1 - 4条)

 第一章は総則です。総則とは、「総て」に通じる「規則」の略ですから、この第一章に書かれている内容は、第二章以降にも通じる重要な基本理念であるわけです。では、第一条から見てみましょう。

第一条は、動物愛護法の目的について記されています。

(目的)
 第一条  この法律は、動物の虐待の防止、動物の適正な取扱いその他動物の愛護に関する事項を定めて国民の間に動物を愛護する気風を招来し、生命尊重、友愛及び平和の情操の涵養に資するとともに、動物の管理に関する事項を定めて動物による人の生命、身体及び財産に対する侵害を防止することを目的とする。

 愛犬家の方々は一読して、少し違和感を感じませんでしたか?この法律の目的は、「人間の情操の涵養(「かんよう」と読みます)と動物による人の生命身体および財産に対する侵害の防止」・・・???。

 普段、かわいいペットと接していらっしゃる飼い主さんは、「動物愛護法って言うくらいなんだから、ひどい人間から動物を保護するための法律なんだ」と思われるのが普通だと思うんです。

 ですけど、法律上の目的はあくまで「人間中心」で考えられているんだと言う事が、この第一条から読み解けると思います。

 とは言え、動物は命があるわけですから、車や机なんかのような、いわゆる「物体」と同じような取り扱いをしては、さすがにまずいわけです。日本の法律では、動物は「物」という取り扱いをされていますが、「ただの物じゃないんだよ」ということですね。


その考えを明文化したのが第二条です。


(基本原則)
 第二条  動物が命あるものであることにかんがみ、何人も、動物をみだりに殺し、傷つけ、又は苦しめることのないようにするのみでなく、人と動物の共生に配慮しつつ、その習性を考慮して適正に取り扱うようにしなければならない。


 さて、この条文でも少し人間中心である思想がちらほら見え隠れしています。

 前段で「何人も、動物をみだりに殺し、傷つけ、又は苦しめることのないようにする」。これは良いですが、「のみでなく」とつながるところがポイントですね。「人と動物の共生に配慮しつつ、その習性を考慮して適正に取り扱う」???「なんだ、こりゃ」って思うでしょ?

パピヨン画像2

 例えば、異常増殖してしまったイタチやアライグマなんかが人里に下りてきて、畑を荒らす被害が、増えてきているとします。その際、役所の担当者によって、駆除がなされる場合がありますよね。それは、一応、法律に基づいた考えであることは確かなんです。

 要するに「人と動物の共生に配慮しつつ、その習性を考慮して適切に取り扱う」って、「人に被害を与えるだけで、共生できないんだったら、駆除するしかないじゃん」って主張も可能になっているんです。

 ヒドイって思いますか?

 でも、例えば、作物を食い荒らされる農家の方、住宅地に入り込んだ大型動物におびえる住民からすれば仕方ないと言う意見もわかる気がします。それだけ、「動物と人間の共生」って難しいテーマなんです。その共生を出来る限り可能にしていく取り組みとしては、やはり生態系の保護、環境保護ということにつながっていくんでしょうね。

 出来るだけ適切に人間と動物のすみわけが出来ていれば、動物の駆除なんて出来事で心を痛めることもなくなるのでしょうから・・・

 そして、第三条は動物愛護の普及・啓発、第四条は動物愛護習慣についての規定です。まとめて見ていきましょう。

(普及啓発)
 第三条  国及び地方公共団体は、動物の愛護と適正な飼養に関し、前条の趣旨にのつとり、相互に連携を図りつつ、学校、地域、家庭等における教育活動、広報活動等を通じて普及啓発を図るように努めなければならない。

(動物愛護週間)
 第四条  ひろく国民の間に命あるものである動物の愛護と適正な飼養についての関心と理解を深めるようにするため、動物愛護週間を設ける。
 2  動物愛護週間は、九月二十日から同月二十六日までとする。
 3  国及び地方公共団体は、動物愛護週間には、その趣旨にふさわしい行事が実施されるように努めなければならない。

イヌ画像1

 第三条では、動物愛護の精神と動物の飼い方について普及と啓蒙活動をするよう国と地方公共団体に対し、努力するよう規定しています。

 ここで、「努力」の二文字が引っかかりますよね。「努力」って事は、「姿勢を見せるだけで良くて、必ずしもやる義務はないって事かい?」って感じなんですけど、そのとおり。

 これは努力規定といわれるもので、例えば、お住まいの地区でこのような動物愛護の普及・啓発の活動が具体的に見えなくても、行政の側が努力している姿勢を見せていれば、動物愛護法に反しているとはいえない訳なんです。ちょっと、玉虫色の表現ですね。

 このような規定は、行政の取り扱いに不服を申し立てる法律(行政不服審査法)、行政側の取り扱いを規定した法律(行政手続法)などに代表されるいわゆる「行政法」の条文で多く見られる表現です。

 第四条の三項も同様の表現ですね。動物愛護習慣の期間中、動物愛護の行事がなされなくても、「今年は予算がありませんでした、すみません」という感じで言い訳が聞くわけです。

 第四条は動物愛護週間についてですが、法律で動物愛護週間という規定が定められているのは、意義のあることだと思います。捨て犬、捨て猫が保健所で処分される頭数が増えてきていますが、本当にひどいことです。

 せっかくこのようなよい機会を法律の側で規定してくれているのですから、少しでも充実した内容のある催し物をしていけるよう、皆で協力して行きましょうね。

第一章のまとめ

 第一章の内容をまとめると・・・

  • 動物愛護法は、あくまで人間の生活を中心として立法されている
  • 動物と人間の共生は、動物愛護法における重要なテーマ
  • 命ある動物を大切にするよう動物愛護週間が定められている

 こんな感じでしょうか?では、第二章に行きましょう!!