動物愛護法を読んでみよう

第三章 動物の適切な取り扱い・第二~四節

 第三章第二節は動物取扱業の規制についてです。

 この節はペットビジネスを開業する方を主に対象としますので、一般の飼い主さんは飛ばしていただいて結構です。

 動物取扱業者とは、「社会性を持って、一定以上の頻度又は取扱量で、有償・無償の別を問わず事業者の営利を目的として動物の取扱を行う、社会通念上、業として認められる行為」を言います・・・って、何のことだかさっぱりという感じですね。

 簡単に言えば、以下の表のとおりです。この表に該当する仕事を開業したい方は、動物取扱業としての登録が必要です。第十条に規定されています。

分類 業の種類 該当する具体的業者例
販売 小売り及び卸売り並びにこれらを目的とした繁殖又は輸出入業を行う事業者 ペットショップ、ペット卸売業者、ブリーダー、ペット輸出入業者、露天販売業者、飼養施設等を持たないインターネット等を通じた販売業者
保管 ペットホテル等保管を目的として顧客の動物を預かる事業者 トリマー、グルーマー、ペットシッター、ペットホテル、ペット一時預かり所、ペット同伴ホテル動物運送業者、等
貸出 愛玩、撮影、繁殖その他の目的で動物を貸し出す事業者 レンタルペット店、動物プロダクション、ペットカメラマン、繁殖用の動物派遣業等の業者
訓練 事業所において顧客の動物を預かり、訓練・調教を行なう事業者 家庭犬・盲導犬・聴導犬・介助犬・警察犬訓練士等の訓練業者、調教業者、出張訓練業者、出張調教業者等
展示 動物園、水族館、動物ふれあい公園、動物サーカス等の動物を見せる業を行なう事業者 移動動物園、ふれあい牧場、乗馬クラブ業者、アニマルセラピー業者、動物サーカス業者等

(動物取扱業の登録)
 第十条  動物(哺乳類、鳥類又は爬虫類に属するものに限り、畜産農業に係るもの及び試験研究用又は生物学的製剤の製造の用その他政令で定める用途に供するために飼養し、又は保管しているものを除く。以下この節及び次節において同じ。)の取扱業(動物の販売(その取次ぎ又は代理を含む。次項において同じ。)、保管、貸出し、訓練、展示(動物との触れ合いの機会の提供を含む。次項において同じ。)その他政令で定める取扱いを業として行うことをいう。以下「動物取扱業」という。)を営もうとする者は、当該業を営もうとする事業所の所在地を管轄する都道府県知事(地方自治法 (昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項 の指定都市(以下「指定都市」という。)にあつては、その長とする。以下この節、第二十五条第一項及び第二項並びに第四節において同じ。)の登録を受けなければならない。

  2  前項の登録を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した申請書に環境省令で定める書類を添えて、これを都道府県知事に提出しなければならない。
  一  氏名又は名称及び住所並びに法人にあつては代表者の氏名
  二  事業所の名称及び所在地
  三  事業所ごとに置かれる動物取扱責任者(第二十二条第一項に規定する者をいう。)の氏名
  四  その営もうとする動物取扱業の種別(販売、保管、貸出し、訓練、展示又は前項の政令で定める取扱いの別をいう。以下この号において同じ。)並びにその種別に応じた業務の内容及び実施の方法
  五  主として取り扱う動物の種類及び数
  六  動物の飼養又は保管のための施設(以下この節において「飼養施設」という。)を設置しているときは、次に掲げる事項
   イ 飼養施設の所在地
   ロ 飼養施設の構造及び規模
   ハ 飼養施設の管理の方法
  七  その他環境省令で定める事項

 「動物」の定義がちょっと細かいですね。牛や豚を飼っている畜産業者、動物学者や研究施設職員は動物取扱業者には当たらないということです。そして、第二項で登録内容を定めています。第十条から第二十四条についての内容については、かなり実務的な内容となっています。もし、ペットビジネスを開業される予定の方で、このあたりの情報を詳しくお知りになりたい方はご連絡ください。

 続いて第三節です・・・と言っても、第三節は第二十五条だけです。でもこの条文は結構重要です。

  第二十五条  都道府県知事は、多数の動物の飼養又は保管に起因して周辺の生活環境が損なわれている事態として環境省令で定める事態が生じていると認めるときは、当該事態を生じさせている者に対し、期限を定めて、その事態を除去するために必要な措置をとるべきことを勧告することができる。
  2  都道府県知事は、前項の規定による勧告を受けた者がその勧告に係る措置をとらなかつた場合において、特に必要があると認めるときは、その者に対し、期限を定めて、その勧告に係る措置をとるべきことを命ずることができる。
  3  都道府県知事は、市町村(特別区を含む。)の長(指定都市の長を除く。)に対し、前二項の規定による勧告又は命令に関し、必要な協力を求めることができる。

 さて、本文中の「環境省令で定める事態」とは何でしょうか?では、環境省令を見てみましょう。省令は通常、「○○施行規則」で出されます。

(周辺の生活環境が損なわれている事態)
 第十二条  法第二十五条第一項の環境省令で定める事態は、次の各号のいずれかに該当するものが周辺地域の住民(以下「周辺住民」という。)の日常生活に著しい支障を及ぼしていると認められる事態であって、かつ、当該支障が、複数の周辺住民からの都道府県知事に対する苦情の申出等により、周辺住民の間で共通の認識となっていると認められる事態とする。
  一  動物の飼養又は保管に伴い頻繁に発生する動物の鳴き声その他の音
  二  動物の飼養又は保管に伴う飼料の残さ又は動物のふん尿その他の汚物の不適切な処理又は放置により発生する臭気
  三  動物の飼養施設の敷地外に飛散する動物の毛又は羽毛
  四  動物の飼養又は保管により発生する多数のねずみ、はえ、蚊、のみその他の衛生動物

 う~む、かなりひどそうですね、しかし、犬の吠える声や野良猫の存在で近所迷惑になっているケースって結構ありますが、あまり勧告なんて大げさにはならないですけどね。なぜ、市役所の職員がきて勧告しないのか?

 実は、「受忍限度」とうものがありまして、「まあ、気持ちはわかるけど、ちょっとくらいなら我慢してよ」という甘えた考えが行政にも裁判所にもあるのです。ほら、空港の騒音公害訴訟で「受忍限度を超えているとは言えない」とかいう判決あったじゃないですか?あれです。

 でも、ご家庭のワンちゃんが無駄吠えしてる場合、やっぱり近所迷惑なのは事実ですから、きちんとしつけて無駄吠えは解消しましょうね。

 ちなみに、ある家の玄関先で頻繁にマーキングする犬がいるケースで、家主はその犬の飼い主を訴える事ができるか?これはマーキングをするがままに放置して玄関先が汚物だらけというようなケースになると、器物損壊罪に当たります。何事にも程度というものがあります。

 そして、第一項と第二項のとおり、都道府県知事の措置は、「勧告」が先で、それでも改善されなければ、「命令」に変わります。

では第四節です。この節はちょっと特殊です。まず、第二十六条を見ましょう。

第二十六条  人の生命、身体又は財産に害を加えるおそれがある動物として政令で定める動物(以下「特定動物」という。)の飼養又は保管を行おうとする者は、環境省令で定めるところにより、特定動物の種類ごとに、特定動物の飼養又は保管のための施設(以下この節において「特定飼養施設」という。)の所在地を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、診療施設(獣医療法 (平成四年法律第四十六号)第二条第二項 に規定する診療施設をいう。)において獣医師が診療のために特定動物を飼養又は保管する場合その他の環境省令で定める場合は、この限りでない。
 2  前項の許可を受けようとする者は、環境省令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した申請書に環境省令で定める書類を添えて、これを都道府県知事に提出しなければならない。
  一  氏名又は名称及び住所並びに法人にあつては代表者の氏名
  二  特定動物の種類及び数
  三  飼養又は保管の目的
  四  特定飼養施設の所在地
  五  特定飼養施設の構造及び規模
  六  特定動物の飼養又は保管の方法
  七  その他環境省令で定める事項

 「特定動物」という単語が出てきました。代表例は毒蛇ですね。あとは、ライオンとか日本の生態系に存在しない舶来の動物も該当します。特定動物を飼う場合は都道府県知事の許可を得なければなりません。ちなみにこの許可は、個人レベルではめったに出ません。動物園などのきちんとした保管施設があるところで、色々と事前検査をうけてようやく出るといった感じです。

 二十六条以下は、特定動物についての申請手順など、実務的な内容です。また、第五章の動物愛護担当職員(第三十四条)については、こんな人もいるんだな、くらいに抑えておけばよいでしょう。

第三十四条  地方公共団体は、条例で定めるところにより、第二十四条第一項又は前条第一項の規定による立入検査その他の動物の愛護及び管理に関する事務を行わせるため、動物愛護管理員等の職名を有する職員(次項において「動物愛護担当職員」という。)を置くことができる。
 2  動物愛護担当職員は、当該地方公共団体の職員であつて獣医師等動物の適正な飼養及び保管に関し専門的な知識を有するものをもつて充てる。

第三章・第二~四節のまとめ

 第三章・第二~四節の内容をまとめると・・・

  • 動物を預かった人、ペットショップ、ブリーダーにはそれぞれ負うべき責任がある
  • イヌのノーリード問題は、都道府県単位の条例で決められている

 こんな感じでしょうか?では、第四章から第六章まで、一気に行きましょう!!